2025年10月10日

「眠れない」「夜中に何度も起きる」…そんな不眠に悩んでいませんか?
眠れない夜が続くと、心も体も疲れてしまいます。
「睡眠薬は依存が怖い」「自然に眠りたい」という方に、近年注目されているのがオレキシン受容体拮抗薬(DORA) という新しいタイプの睡眠薬です。
オレキシン受容体拮抗薬とは?
自然な眠りをサポートする新しい仕組み
オレキシンとは、脳の中で「目を覚ますスイッチ」として働く物質です。
この働きが強すぎると、夜になっても頭が冴えて眠れなくなります。
オレキシン受容体拮抗薬は、このスイッチをやさしくオフにして自然な眠りを促すお薬です。
従来の睡眠薬(ベンゾジアゼピン系やZ薬)のように脳を強く抑えるのではなく、体本来のリズムを整えるように作用する点が特徴です。
日本で使える主なオレキシン受容体拮抗薬
薬剤名 | 特徴 | Tmax(効き始め) | t1/2(作用時間) | 悪夢の頻度(目安) |
---|---|---|---|---|
ベルソムラ(スボレキサント) | 世界初のDORA 中途覚醒に強い |
約1〜1.5h | 約12h | 約1〜5% |
デエビゴ(レンボレキサント) | 入眠効果が速い 用量調整が柔軟 (2.5〜10mg) |
約1〜1.5h | 約50h | 約1〜3% |
クービビック(ダリドレキサント) | 半減期が短いので 翌朝の残りが少ない |
約1h | 約6h 高齢者は約9h |
約1〜3% |
ボルズィ(ボルノレキサント) | 最も半減期短い 入眠促進に特化 未発売 |
約0.5h | 約2h | — |
Tmax:効き始めるまでの時間
t1/2:薬が体から半分抜けるまでの時間
不眠と睡眠構造の関係
夢を見る眠り(レム)も、体を休める眠り(ノンレム)も増える
オレキシン拮抗薬を使うと、レム睡眠(夢を見る睡眠)が増えるため、「夢をよく見る」「悪夢を見た」と感じることがあります。
ですが実際には、深いノンレム睡眠(N3)も増えることが分かっています。
つまり、「夢を見やすくなる=浅い眠り」ではなく、全体として“自然に近い眠り”に整えてくれるのが特徴です。
悪夢があっても、多くは服用初期だけで、続けるうちに慣れてくる方が多いです。
依存や離脱(反跳性不眠)は大丈夫?
従来の睡眠薬では、「続けると効かなくなる」「やめたら眠れなくなる」といった耐性・依存・離脱症状が問題になることがありました。
オレキシン受容体拮抗薬では、
耐性:長期使用でも効果が落ちにくい
依存:身体的依存は少ない
離脱:中止後の反跳性不眠はほとんど報告なし
とされています。
ただし、「ゼロではない」ため定期的な見直しが大切です。
不眠の治療は薬だけではありません
日本睡眠学会では、薬物療法だけでなく、生活リズムの是正・睡眠衛生指導・認知行動療法(CBT) の併用が推奨されています。
たとえば次のような工夫も効果的です。
・寝る、起きる時間を毎日そろえる
・就寝前2時間は強い光、スマホを避ける
・日中に軽い運動を取り入れる
・カフェインやアルコールを控える
まとめ:自分に合った眠り方を見つけよう
オレキシン受容体拮抗薬は、不眠症治療の新しい選択肢です。
・自然な睡眠構造(レム+ノンレム)を保ちながら眠りをサポート
・依存や離脱のリスクは少ないが、ゼロではない
・悪夢は一時的なことが多く、深い眠り(ノンレム)が増えるメリットも
・医師と相談しながら、安心して使える睡眠薬を選ぶことが大切
眠れない夜が続くときは、ひとりで悩まずご相談ください。
あなたに合った眠りの形を、一緒に見つけていきましょう。